写真や品に宿る“人生” -故人らしさを伝えるメモリアルコーナーの力- 終活の豆知識 80

お葬式に参列した際、会場に飾られた故人の写真や思い出の品に、ふと足を止めたことはありませんか?それは「メモリアルコーナー」と呼ばれる空間。形だけのお葬式から、“その人らしさ”を伝えるお葬式へと変わりゆくなかで、今このメモリアルコーナーに注目が集まっています。かぐやの里メモリーホールのエンディングプランナー中村雄一郎さんは、このメモリアルコーナーの演出に強いこだわりを持つ一人です。

■「人を送る」場所を作るため
中村さんによれば、メモリアルコーナーの文化が広まり始めたのは今からおよそ20年前。首都圏で家族葬が増え、義理で参列する時代から、故人をよく知る人たち中心でお別れする時代へと移行する中で、自然と「その人らしさ」を感じられる演出が求められるようになりました。亡くなった姿を見るだけでなく、生きていた“あの頃”の笑顔や日常を思い出してもらいたい。そんな願いから、思い出の品や写真を飾るようになってきました。
■ご家族に寄り添いながら、テーマを紡ぐ
メモリアルコーナーはプランナーの手作りと中村さん。準備の際、ご家族に「どう飾りましょうか?」と聞いても、明確な答えは返ってこないことが多いといいます。だからこそ、ご家族との会話から故人の人柄や趣味、人生の歩みを丁寧に聞き取り、そこから一つの“テーマ”を描き出します。単に好きだった物を並べるのではなく、家族・親族・会葬者の方が、どんな思い出を振り返ることができるか?何を感じてもらうか?を常に考えるとのこと。

■表現にも「プロの目線」で
実は中村さん、まだ駆け出しだった頃に、美術館や百貨店のディスプレイを見て回り、表現の工夫を学んだ経験があるそうです。「どの角度から見れば一番伝わるのか? 写真に添える言葉は? 小物の配置は?照明は?」そのすべてに意味があるといいます。現在でも、かぐやの里では専属のデザイナーと協力し、写真パネルの制作や飾り付けにとことんこだわっています。「メモリアルコーナーは、人生の展示会のようなもの。ご家族にも、来てくださった方にも“あの人の人生って素敵だったね”と感じていただける空間にしたい」と話します。

■見慣れた写真が、誰かの涙を誘う
「親戚の方が、“自分が写っている写真を飾ってくれてありがとう”と涙ぐまれることもあります」と中村さん。ご家族にとっては見慣れた一枚でも、訪れた方には懐かしく、心を揺さぶる瞬間があるのです。「人はなぜ亡くなったか、ではなく、どう生きてきたのかを見送る場所にしたい」――メモリアルコーナーは、そのための“心の架け橋”だといえるのかもしれません。

■さいごに 人生のしめくくりに、どんな想いを遺したいか。そして、どんな形で送りたいか。
それを考えるきっかけとして、メモリアルコーナーは静かに、けれど力強く、私たちに語りかけてくれます。「見る人の心に届く場をつくることが、プランナーとしての責務です」と語る中村さんのまなざしには、深い誠意と、確かな使命感がにじんでいました。