お葬式での食事事情 終活の豆知識68

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お葬式で用意する品物の一つとして重要なのは「食事」である。従来お葬式ではお通夜後の通夜振舞いや法要後の精進落としなど、参列者と共に会食するのがお葬式では定番であった。しかし、コロナ以降の大きな変化があったとかぐやの里メモリーホールの中村さんが語る。

お葬式での食事について

お葬式において食事を提供する理由は様々ありますが、主な理由としては「故人様を偲ぶこと」「参列者に感謝を示すこと」があります。仏教のみならず神道でも直会(なおらい)と呼ばれ、食事を提供します。かつては、夜通し人が集まり語り線香の番をするなどしていたことから通夜と呼ばれており、その際に提供する食事が通夜振舞いでした。葬儀社が多くなかった時代は、食事は近所の方々によって炊出しが行われて、食事を提供していました。その習慣は地域ごと異なっており、元吉原や田子など海沿い地域では茶飯おにぎり、大渕などではお餅など、様々な慣習がありましたが、現在ではほぼ地域差は無くなり他地区の文化が一般的になりつつあります。

精進落としとは

仏教でのお葬式で良く耳にする精進落とし。これは時代と共に変化しております。元々は忌明けまでの四十九日間は故人が極楽浄土に行けるようにと、遺族は肉や魚を含まない精進料理を食べていました。そして忌明けに通常の食事に戻すことを精進落としとしていました。現在は、お葬式後に食べる食事を示すようになり、普通の料理が提供されます。精進落としという呼び名も、お斎(おとき)や精進上げなど言われることもあります。

食事の流れ

先に述べた通りお葬式時の食事には様々な意味合いがありますが、近年の傾向として参列者への御礼の意味で、おもてなしの要素が強くなってきました。コロナ禍で家族葬が進みお葬式の最後まで参列する人数が減少傾向にある中で、残ってくださった方々への御礼に美味しい食事を提供したいという傾向にあります。かつては、火葬中に助六寿司で、その後に会場に戻ると御膳を用意してあり、食べられない方は持ち帰るといった流れが一般的でした。助六寿司と御前の両方を用意する形は、炊き出しが少なくなってきた平成頃からの流れです。現状では、火葬場まで行く人数も減ってきたこともあり、火葬中食事が増えており火葬中に御膳を召し上がっていただくことが増えました。遺族としては2つの食事を用意する負担も減り、参列者も収骨後の火葬場解散ができるので拘束時間も減ります。

食事の内容

炊き出しが無くなって以降は、文化も変わり葬儀社主導の食事内容となってきました。一般的には、通夜振舞いにはお寿司とオードブル、精進落としには和食、という傾向があります。これは関東地方と同じような内容です。かつては、精進料理を元とした内容が中心でしたが、最近では御礼に美味しい食事を提供したいという葬家の意向があることから、各有名な飲食店の食事を提供することも増えてきました。

また、和食にこだわらず食べやすい内容の食事も人気です。お子様から40代の方々が中心の場合は洋食メニューもご依頼いただきます。

コロナ禍での変化

 コロナ禍では会食自体が避けられるようになり、個別にお弁当でお渡しして代替えとすることが流行り、今でも一定数の希望があります。一方で、会食が戻ってきたこともあり、故人を偲んでみんなで会食することも増えてきました。また、ここ数年は親族一同で会う機会も無かったことから、喪のタイミングであっても親族一同で時間を共にする機会としている家庭も多いようです。

今後の変化

先にも述べたように、精進料理から始まり、炊き出し料理そして葬儀社料理と変化してきました。この先もお葬式数の増加や会葬人数の減少によって今の形も変わってくるでしょう。そんな中でも、家族が故人が好きな料理でおもてなしするなど、個々で考える形も出てきました。それはそれとして良いことだと思っています。故人を偲ぶところに料理があるので、慣習にとらわれずに家族や会葬者の気持ちが届くものがあればと思っています。