終活の豆知識㊶葬儀後の不動産相続
目次
富士市の専門葬儀社では初めて相続不動産サポート事業部を昨年からスタートしたかぐやの里メモリーホール富士。地方都市で増加するいわゆる空き家問題の一助になりたいとチャレンジを開始。その内容や今後の取り組みをかぐやの里メモリーホール富士の中村雄一郎さんに聞いた。
空き家問題とは?
少子高齢化や人口減少などの理由により、空き家数の増加が社会問題となっています。平成30年住宅土地統計調査(総務省統計局)では、空き家数は846万戸で全国の住戸の13.6%を占め、5年毎にまとめられるこの調査において、平成25年から26万戸増と過去最高の数になりました。管理が行き届いていない空き家は、その地域に防災上、衛生上、景観上などの観点からさまざまな悪影響を及ぼすと言われています。
相続不動産部門を立ち上げた背景は?
空き家問題は、富士市議会でも取り上げられる喫緊の課題であり、我々も地元企業として何かしらの役に立てないかと考えていました。我々はお葬式後の手続きを案内するアフターサポート部門においてに、従来以上に手厚い説明やサポートを行いご好評いただおります。その中で、「住む人がいなくなった家をどうしたらいいか?」という相談も多々受けていました。これまで専門分野に関しては協力業者を紹介するといった形でしたが、せっかく我々を頼って相談を受けたにも関わらず、直接的にサポートできないもどかしさがありました。更に不動産相続は、維持するにも売却するにも時間がかかることから、ご家族の負担にもなります。めんどうだとついつい後回しになり、結果として放置されてしまう。そんな悪循環に陥る前に弊社がしっかりサポートしようと考え、私が葬儀業界全国団体の事務局長を務めていた際のご縁で、福岡市の葬儀社が実際に行っている不動産相続の事業をモデルに導入しました。
実際にはどんな事業でしょうか?
住んでいた方が亡くなり、住民がいなくなったご自宅などの住宅や土地の不動産について、時間をかけないよう我々が買取もしくは仲介を行います。ご家族様にとってのメリットは、①現金化が早くお葬式関連の支出を補える②不動産業者を選ぶ手間が不要③手続きが長引かないなどがあります。お葬式後にどうしようかと悩みながら手が付けられないケースも多い中で、お葬式をお手伝いした我々が引き続きサポートできる体制を作ることで、よりご家族の役に立てると思っております。直ぐに決められない方にも向けても、一周忌や三回忌のタイミングで区切ることもできるので、ご家族に合わせた対応も可能です。
実際の声はどうなのでしょうか?
まだ事例は少ないですが、ご好評頂いております。お葬式も不動産活用も同じで、ご家族にとって初めてのことを自分たちで一から行うことは、不安でたいへんです。不動産業者の選定・相見積もり・測量・家の中の片付けなど様々なことを一つの窓口にすることで、お互いに意思疎通が楽になります。弊社では査定を素早く行うことで、お葬式やお墓における大きい支出に対して収支の目算ができるのも安心材料の一つとなっております。
売却以外の不動産相続はどのようにしたらいいのか?
そもそも引き続きその住宅や土地を使う場合は、名義変更の手続き方法のご説明もしくは手続き代行を行います。そちらを賃貸物件として活用を考える方には、リノベーションから賃貸手続きまでをご案内いたします。ご家族が所有していた大切な不動産なので、ご家族のご要望に合った形で活用をお手伝いします。いずれのパターンにも共通してくることとして、内部のお片付け(遺品整理)もご案内しております。葬儀社が行う遺品整理なので、大切な品や宗教的な品(仏壇や神棚など)も供養しながら終うことができます。
今後の展開について
超高齢化社会に突入する中で、人口減少に伴う様々な課題に行政のみならず地元企業も連携して取り組むべと考えております。現在も、富士市市民課のお悔やみ窓口や税理士による相続相談など、様々なサポートが受けられますが、葬儀社は大切な家族が亡くなった直後に最初に寄り添う存在です。これまでお葬式に特化してきましたが、ご家族からすると手続きも含めてお葬式後にも心配や不安が残ります。お葬式を終えて一年でも五年でも十年でも頼られる存在になることが、これからの葬儀社の役目と考えます。その一つが不動産であり、今後も様々な分野においてご家族がお困りのことに早く適切にサポートできる体制をこれからも構築していきます。
実例
富士市で一人暮らしをしていたお母様が市内施設にてご逝去されました。喪主は一人娘である長女様です、都内にお住まいでした。その時は緊急事態宣言中であり、自家用車を所有していないご家族は逝去時も富士市に駆け付けることができませんでした。そのような状況下であったので、電話での連絡のみで施設お迎え➡安置➡ご葬儀とこちらで段取りと対応を行いました。故人様が住んでいたご自宅は施設に入所以降の数年間はそのままとなっており、建物から庭までかなり放置されておりました。喪主様は今後どのようにするかも判断できない状況の中、お片付け・遺品整理・解体を行い売却した場合の暫定金額を数日以内に算出してご提示しました。すると、ご葬儀代やお墓代を差し引いても数百万円のお渡しができる旨をお伝えしたところ、結果として売却となりました。喪主様曰く「不動産について誰にどのタイミングでどのように話をすればいいかわからなかったので、お葬式に続いて案内してくれて助かった」とのことでした。その土地は、故人様を知るご近所の方の手に渡り、新しく活用され始めました。