エンディングストーリー② おばあちゃんのためのお弁当

かぐやの里メモリーホールでは、100名いれば100通りのお葬式を提供するために、エンディングプランナーが全てのお葬式で工夫を凝らしています。ご家族のお考えを超える葬送の時をプロデュースするエンディングプランナーの実話をお伝えします

ある夜に、かぐやの里メモリーホールに一通のメールが届きました。「祖母が入院中で様態が悪く、逝去してしまった際にどうしたらよいか教えてください」との内容でした。エンディングプランナーの中村雄一郎は、状況を察してお電話をしたところお問合せくださったのはお孫さんでした。

一時入院のつもりがもう長く無いと言われて、喪主であるお母様は付き添いで準備が出来ないことから、お孫さんが葬儀社探しをしていたそうです。職場からのお電話ということで、手短に口頭で説明した後に、翌朝には資料を持参し自宅に伺って説明したところ、まずもっての不安点などを解消されました。

しかし、その2日後にご逝去の連絡を受けたのです。早速中村はプランニングに取り掛かりました。実はお孫さん他ご家族がお葬式前に不安に感じていた点は大きく2点ありました。

1つは「自宅に安置するかホールに安置するか」、もう1つは「宗派のこと」でした。ご家族は、最初は家族葬だから預かり安置にするつもりでした。家族葬の場合は直接ホールに安置するものだと思っていたそうです。しかし事前に自宅に訪問した際に、ご自宅でも十分に安置できるスペースがあることの確認と共に、祖母がこの自宅を70年以上も守ってきたことを伺い、自宅にお連れしましょうと事前に相談していたのです。

病院から自宅に帰ってきたのは深夜でしたが、おばあちゃんが自宅に帰ってくることを心待ちにしていたお子様やお孫さんたちが待っていてくれました。「おかえりなさい」と涙ながらに声をかける家族の姿は温かなものでした。

宗派については、日蓮宗をルーツとする全国的な宗派で、日ごろから共に活動していたお仲間も多くいらっしゃったことから大勢をお呼びしたいが、費用的なこともあり参列人数を抑えたいという意向もありました。

そこでプランナーと責任者の方で打合せをし、通夜式はお仲間をお呼びして、告別式は親族中心の家族葬となりました。不安材料が解消されて、宗派的な内容も整った後に、故人様についてインタビューを行いました。インタビューが始まるとそれまで別の部屋にいたお孫さんやひ孫さんが集まってきました。もう90歳を超えたおばあちゃんが大好きなことが見てわかります。

年末に少し調子が悪いからと入院したおばあちゃん。今回の入院は検査的なもので、ご家族も本人も直ぐに家に帰るつもりでいたので家族恒例のクリスマス会には出るつもりでいたそうです。正月も皆で自宅に集まるつもりでいました。しかし、まさかのことでそれらは叶いませんでした。

そして自宅でのイベントは家族だけの事では無くて、近所の方も巻き込んでの事でした。地域の行事の際はもちろん、近所の誰かの祝い事や季節の集まりなど、近所の方にとってもおばあちゃんの家に集まることは恒例行事になっていました。今の時代に徐々に薄れてきた地域の方々との繋がりやコミュニケーション。

それを今でも体現していたおばあちゃん。「準備を手伝う側は大変でしたよ」と言う喪主の長女様ですが、誇らしげに笑いながら話してくれたことから、中村は「自宅を出る時は近所も巻き込んでみんなで送りませんか?」と提案。この自宅での思い出は家族だけでなくご近所の皆様にもたくさんあるだろうなと察したのです。

早速近所に声掛けをすると。弔問を控えていた方もいらっしゃたそうで、ぜひ立ち会いますと大勢の方々が自宅での見送りに参加してくださいました。そして、最後にもう1つご提案。この家を70年以上も守ってきたおばあちゃん、旦那様がずいぶん前に先立ってからも自宅を守ったおばあちゃん、自宅におおくの人を招いたおばあちゃん、家族とたくさんの思い出を作ったおばあちゃん、そんなおばあちゃんのためにとプランナーが提案したのは子供と孫で作るお弁当でした。

おばあちゃんは自宅でのイベントが大好きでしたが、その際お料理はほとんどせずに娘さんやお孫さんに指示をしていたそうです。こだわりが強くおもてなしを大事にしていたことから、必然的にいつもおばあちゃんの好みの料理になっていたとの事。「それではいつもの通りにおばあちゃんの好きなラインナップでお弁当を作って持たせてあげてください」と提案したところ、家族総出で早速打合せ開始。あれもこれもと意見が飛び出し特製弁当を作ることになったのです。

お葬式の当日に家族が風呂敷に包んできたお弁当。「おばあちゃんありがとう」の涙と共に家族の手で棺の中に手向けられました。家族の想いと感謝が詰まったお弁当は故人様にとってもとても嬉しいものとなったはずです。

お葬式が過ぎて後日手続きの説明サービスで自宅に伺った中村が、お弁当の中身は何を用意したのか聞くと「総勢7名で特製弁当を作ったんです。きっとおばあちゃんのことだからみんなに配っちゃうと思って大きいお弁当にしました。作っている時にも昔話に花が咲いて盛り上がって・・・」と楽しそうに教えてくれました。「最後の最後までみんなでおばあちゃんのために尽くせたことが幸せでした」と語ってくれたお孫さんの笑顔は今でも忘れられません。